盧溝橋

お昼はどこで食べたか思い出せない。次の予定地、洛陽へ行くため、北京駅に行ったのは四時近かった。さすが駅舎は立派で、駅前の広場も広かった。驚いたことに、その広場に中国人労働者がひしめいていた。中には=一角の笠をかぶっている者もおれば、天秤棒に布団や鍋、釜をくくりつけた者もいる。戦前の中国の風景である。あの雰囲気をみると、怖くて、とても一人では行けない。私たちはガイド氏を先頭に、その群衆を掻き分けるようにして待合室に入った。外人専用の待合室か、中国人のお客は一人もいなかった。
広い待合室に、肘当に緑の縞模様のレザーを張った椅子が三、四十名分並べられてあった。この待合室の壁にも書画の掛軸が吊しであったが欲しいと思うものはなかった。お茶の道具が準備されており、セルフ・サービスで誰でも飲むことができた。発車した時は日が暮れて、ボツボツ街の灯が車窓から眺められた。
十分くらい走ったとき、左側に長い橋が見えた。付近一帯は荒地で、川幅は広かったが水は少なかった。長い橋だなァと思って眺めていると、後の車輔で董さんが大きい声で「蓮溝橋です。重溝橋が見えます」と叫んでおられた。私はもうカメラを構える余裕はなかった。すばやくスケッチブックを聞いてスケッチをした。線が曲がろうがかまわない、出来、不出来は問題ではない。車溝橋を見た感激をそのまま、描いたことに大きな意義がある。いい記念の絵ができた。
撞溝橋は八百年前、金の時代に造られた石の橋で、マルコ・ポーロの『東方見聞録』にも美しい橋と紹介されている。それ以来、外国人はこの橋を「マルコ・ポーロ・ブリッジ」と呼んでいる。
マルコ・ポlロは六百年前、イタリアのベニスに生まれ、シルクロードを通って中国に来た商人で、元朝に仕え、帰国してから自慢心地に語った記録が東方見聞録で、例えば中国の東にジパング(日本)という大国があって、そこの王様は純金の茶碗と箸で飯を食べ、冠は勿論純金で、履いている靴までが金であったという具合で、当時の人は彼を「法螺吹きポlロ」と呼んでいたという。だが、そこには当時の風俗、習慣、社会制度など貴重な歴史的資料がたくさん記されであって、今でも、広く読まれている。
重溝橋はまた、そんな遠い昔の話よりも、むしろ現代史の大きな舞台になったことで、日本人の誰もが知っている。
昭和十二年(一九三七年)七月七日の深夜に響いた銃声が、日中両国の全面戦争に発展し、ひいては第二次世界大戦の原因にもなった。事件勃発当時、日中両軍とも互いに発砲を否定し合いながら、ずるずると戦闘が拡大していった。私が最近読んだ数冊の関係者の体験記や歴史家の詳細な調査研究によれば、中国共産党が漁夫の利を狙って日中両軍を戦わせるために発砲した謀略であったらしい。事実、蒋介石軍の国防部長(陸軍大臣相当)何応欽将軍もそれに気付き「中国も日本も国際共産党にしてやられた」と慨嘆しておられた。国際共産党の恐ろしきを日本人はまだ気付いていないようだ。あれは白人の首祭りで、裁判ではないと批判されているA級戦犯を裁いた不公平極りない東京裁判でさえ、あれほど満州事変の原因を徹底的に究明し、満州事変当時関東軍参謀で、事件の発起人と言われている石原莞爾氏をわざわざ酒田市まで出張して取り調べていながら、重溝橋事件についてはあっさりと殆んど調べていなかったという。何故か、もし、調べれば調べるほど中国(共産軍)の謀略であったことが暴露されるからだ。しかも中国代表の裁判官、検察官が参加しているその東京裁判の判決で「謹溝橋事件は日本軍による挑発的発砲とは言い難し」と明快に判示している。だから日本人は、撞溝橋事件は日本軍が引き起こしたという俗説に迷わされてはならない。

日本の若い一部の人は「わざわざ中固まで出掛けて行って軍事演習をすること自体が間違っている」と、さも物知り顔でうそぶいている。彼等は学校で習わなかったのだろうか。一九OO年(明治三十三年)中国で土俗宗教団体の義和団が動乱を起こした。清朝はこれを鎮圧できないばかりか陰で支援さえしていた。それで英、仏、露、伊、米、日の各国は、居留民保護のため共同で出兵して鎮圧した。この事件の結果として結ばれた条約で、各国は以後、居留民保護のため軍隊を駐留する権利が認められたのである。だから、中国に軍隊を駐留させていたのは日本だけでなく、英、仏、露、伊、米国も駐留していたので、軍隊であるから軍事演習を行うのは当然で、あの時、わざわざ日本から出掛けて行って演習を行なったのではない。

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