厳重な税関

私達は、数時間無為に待たされた後、各自自分のトランクや手荷物を持って一列に並んで税関の部
屋へ入った。先客のアメリカさんや、北朝鮮の観光団より先にどうして税関室に入ることになったのかその事情はわからないが、何か後ろめたいことをしたような気持ちの反面、優越感というか、長時

間待たされたうつぶんがわずかに晴れた。こんなことをするから、日本人観光客のマナーが外国で云
々されるのかも知れない。
薄暗いその部屋に、窓を背にした制服の税関吏が五、六人並んでいた。われわれはその前へ一人ずつ行った。彼等は大きな声で何かわめきながら、手でトランクを聞けろという素振りをした。人間というのはよく出来たもので、言葉が全然通じなくとも、手まね足まねだけで簡単な用は足りるものである。僕はトランクを開けた。彼はまずそれは何か、と菓子箱を指した。僕は黙ってそれを開けて見せた。ボールペン、サインベン、マジックインク、画用鉛筆、クレオン等々あれこれ百本近くのものが出た。彼はOKをしながらこんどは、スケッチブックを手に取ってまだ何も描いてない真白い画用紙を一枚一枚めくりはじめた。暗号数字か符牒でも書いてないかと調べているらしい。隣りで検査を受けているKさんは、分厚い旅行記を二、三冊持っていたので、同じやり方で調べられていた。
旅行のパンフレットの注意欄には、ソ連の国情から、テープレコーダーと週刊誌は絶対に持ち込めないこと。許可のない場所では絶対に写真は撮れないこと等々、どこの国でも平気で持ち込んだり写真を撮ったり出来ることが、特に禁止事項としてゴシック文字で印刷してあったことを思い出す。数年前、イスラエルへ行った時は、例の六日開戦争の直後で、あっちこっちに戦車がまだひっくり返ったままになっていたが、死海のほとりのヨルダンとの国境地帯でも、ゴラン高原ではシリアとの国境でも、自由に写真を撮って来た。その頃である、僕の画友でソ連へ行った時、職業意識というか、日頃の習慣というか、景色に見とれてうっかりスケッチをしたとたんスパイ容疑で私服に逮捕され、日本の大使館員があわてて駆けつけてくるまで、二、三日留められた揚旬、ヨーロッパで描いたスケツチ百数十枚を没収されてやっと帰国した男がいた。

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