レーニン通り

ロビーには、ソ連国営旅行社から派遣されたガイド氏が待っていた。長身、三一十五、六才か、色白、栗毛、瞳はやや青味、薄茶綾杉織の冬服、クリーム色のワイシャツに赤いネクタイ、なかなかの男前。
「ゴクローサン、オマチシマシタ。パスイマキマス。ヒロパヘデマショウ」流暢な日本語を話す。広場には大きい円形の花壇があり、花壇いっぱいに星の形にベコニアが植え込んである。真中に旗竿が立っていた。
広場から幅五、六十メートルの道路が伸びていて、その両側に整然と幾列にも白樺が植えられ、その根元にベンチが置かれていた。売店らしいボックスも立っていたが、店はしまっていた。
右側の白樺の林から、ゾロゾロと若い兵隊が四列に並んで出て来た。チェリー・グレー(あずき色)の肩章と、革の半長靴が印象的で、左側の白樺の林に入って行った。
空港ビルから太った真白い髪のお婆ちゃんが、三、四才の女の子を連れて出て来た。白蝋のような頬に水色の瞳、西洋人形のような可愛い顔をしていた。
広場の左側から、東京にはもうなくなったトロリーバスが出て来た。雪解けの道を走って来たのかドロンコである。相当の時代物だ。乗客の二、三人はみんな太ったお婆ちゃんだった。
待つこと三十分、ようやく旅行社のパスが来た。これも時代物である。一番先に乗り込み、最前列に座った。黄色い薄地の木綿のカーテンを開けようと思って引っ張ったが、金具がこわれていた。ガイド氏、が改めて自己紹介をしてから「ワタクシ、ダイガクデ、ニホンゴヤリマシタ。ニホンジン、トキドキアンナイシマス」と言ったので、われわれは拍手して彼に応えた。筋金入りの党員だろう。
パスは二百メートルくらい走ると、左へ曲がった。ヵール・マルクス通りとガイド氏。両側は空地、ポプラ、アカシア、白倖などが雑然と植えられている。夕方のためかなんとなく物寂しく、寒々とした風景がある。
陸橋を渡った。下に単線の鉄道が通っていた。「コレシベリア、テツドゥ。モスクワマデ九千キロメートルアリマス」とガイド氏の説明。これがシベリア鉄道か、今迄なんべん活字で見、また聞いたことであろう。やっぱり来なければ見れない鉄道である。
「ホツボツ近代的なビルが見えてきた。どのビルも側壁いっぱいに収穫を喜ぶ女性や、ハンマーを振り上げた労働者が描かれている。やがて街に入る。大学、デパート。レーニン通りとガイド氏。山林を切り開いて作った都市だけに、尾根伝いにメーンストリートが走っており、起伏が多い。道幅は広
く、街路樹は大きい。レストラン、銀行―――この国に銀行があったのかと一瞬奇異に思う――堂々とした建物。レーニン劇場、レーニン広場、やたらとレーニンの名が出てくる。サラリーマンの帰宅時刻か人通りが多く、一屑をいからした軍人が目につく。婦人の服装もなかなかカラフルで立派な体格をしている。革命広場、高い革命記念碑、英雄広場。ホテル・イン・ツウリストに入る。六時三十分、空港から三十分だった。

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