台湾上空

あと一時間半で香港に着く予定です」というアナウンスがあってから私は、後尾のトイレに行った。トイレの前に立って、さてどちらに入るべきかと迷った。トイレらしい綴りの英語はない。ゼントルマンともレディーとも書いてない。シルクハットをかぶった黒い紳士のシルエットも、スカートをはいたピンクの婦人のシルエットの表示もない。旅行記などを読んでいると、トイレの中の失敗談、が多く書いてある。いよいよ外国での生活が始まったという実感がした。ままよと思って左側のドアーを開けようとしたが聞かない。誰か入っているらしい。右側のドアーを引張ると聞いた。もちろん洋式である。日本の便器は白い陶製であるが、ここの便器は黒い。やっぱりこんな小さな相違でも異様に感ずるものだ。手洗いの上にボタンが二つあって、赤と青の色がついている。ためしに押してみたら青は水、赤い方からはお湯が出て来た。柔らかいベイパーが沢山備えであった。
席に一反ると乗客はみんな外を見ていた。翼の真下に雪を頂いた山々が連なっている。私は台湾だろうと直感した。京都のおばさんに九州でしょ民ノかと聞かれた。私は九州にはもう雪の山はないでしょうから台湾の新高山かも知れませんよ、というとおばさんは「もう台湾まで来たのですか」とピックリした顔で、首を伸ばして窓から雪の山々を見下ろしておられた。大きな川が見えて来た。川の両側は碁盤目のように整然と区切られ、良く耕されてあった。その真中を糸のように道路が伸びていた。ところどころに、民家や街並がつぎつぎと展開してきて見飽きない。人手のように伸びた半島や岬に真青な海が白い波頭を立てて押し寄せている。五分くらいで飛行機はまた白雲の中へ入った。
私は今見たこの台湾がもと日本の領土であったことを思い出して、一抹の懐かしきと折角開発したこの土地を失った悔しさを感じながら、あの戦争の意味を考え続けた。

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