ナチ犠牲者の墓苑

第二次大戦中、六百万人とも八百万人とも言われるナチの犠牲者の墓地は、シオンの丘から近かった。長い参道は山の斜面を削って造られ、右側が高く、石積みで土留めがされ、オリーブが植えられ、桜草のような小さいピンクの花が咲き乱れていた。左手の斜面にはフランス、ポーランド、アメリカ、イタリア等世界中のユダヤ人団体から寄贈された木が植えられ、その根元に団体の名を書いた小さな名札が立てであった。
墓は石積みの大きな建物の中にあって、ここの門扉も黒く塗られた不等形の三角や四角や木の枝かと思われる透かし彫りの彫刻が飾りつけられであった。
建物の中へ入る時、男はみんな備付けの黒いお椀のような帽子を渡されてかぶったが、私は黒いベレー帽をかぶっていたので、そのまま入ることができた。百坪くらいの中は薄暗く、壁に添って鍵の手に歩廊がつけられ、墓石は歩廊から見下ろすようになっていた。黒御影石が敷き詰められ、小さい墓石が点々と幾つも立てであった。墓石の前には各収容所の名前が彫られてあり、各収容所から発掘された遺骨がその墓石の下に葬られ、遺骨が見つからない収容所からは、その土を持って来て埋めたという。
鍵の手の歩廊の反対側の隅に、青白い燈明がユラユラと燃えていた。犠牲者の霊を慰めるため、この燈明はどんなことがあっても絶やさないのだという。暗い部屋の中の明りといえばこの燈明だけであった。それだけにこの燈明の光りは異様であり、犠牲者の呪いのようにも見え、私はむしろ薄気味
悪く感じた。先に入っていた外人観光客は、その燈明に向って岬くような声を出してお祈りをしていた。おそらくユダヤ人であろう。あるいは犠牲者の遺族かも知れない。
ちょうど、この燈明が燃えている真上の天井の一点から、部屋の三隅に向って鮮やかな孤線が何本も放射状に彫られてあった。その弧線が三隅に広がって行くのか、あるいは三隅からこの燈明の真上に集約されるのか、またその弧線が何を意味するのかわからないが、この孤線の集約点の真下にユラユラと犠牲者の霊を慰める青白い燈明が燃えている、視線はその燈明の一点に注がれる。造型的で、近代的な建築美はすばらしいと思った。

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