死海文書

パスは夕日を背にして今来た道を下った。道路の下の斜面に桜が咲いていると言って、いっせいに座席を立って外を見た。ガイド氏が桜ではなく「アーモンド」の花だと言った。日本人は桜の花を見ると興奮する民族なのかも知れない。私は近くから見ても、遠くから見ればなおさら桜の花としか見えない。あるいは日本の桜を、この国の人はアーモンドと言っているのかも知れないと思ってもみたが、チョコレートの中に入っているアーモンドの実がなるというから、やっぱり桜とは違うのだろう。
パスは小高い丘を登り始めた。前に一台小学生を乗せたパスが走っていたが、そのパスも私達のパスに劣らずオンボロだった。終戦直後の木炭車のように、ボデーの後ろにおかしな箱がついていた。

このバスが止まったところに私達のパスも止まった。ケネディ記念堂の見学だという。螺旋状の石段を登ってゆくとコンクリートを固めた広場に出た。中央に石柱に固まれた小さい堂があった。近寄って見たが中には何もない。おかしな記念堂である。ケネディというのはアメリカの大統領をやったケネディであろうか。そうだとするとケネディはユダヤ人だったのか。それともイスラエルの独立に貢献があったのだろうか。独立は彼が大統領になる十年くらい前のはずだ。どうもわからない。
小学生は修学旅行らしい。三、四年生くらいか、高学年ではない。みんな無邪気にワァワァと広場を駆け回っている。どこの園の子供も同じだ。服装は組末だった。この国の生活の貧しさが見えるようだつた。いや「欲しがりません、勝つまでは」と建国に励んでいる姿なのかも知れない。みんな水筒を下げていた。カメラを出すと寄ってたかつて珍しがり、レンズを向けるとわれもわれもとワァワァいいながらその前に並ぶ、この子供達が大きくなる頃には、この国もきっとすばらしい発展を遂げているだろう。
私達は小学生達より先にパスに乗った。パスはでフライ大学の正面前に出ると、右に曲り、博物館の前に止まった。入口の広場に観光パスが何台も止まっており、観光客であふれでいた。本館は百メートルくらい先に立っていた。そこまでの歩道の両側に花壇が作られ、糸杉が植えられていた。
私達は、本館に入る前に右側にある真白いお椀を伏せたような形の建物に入った。この建物の中に、近年死海の付近の洞窟から発見された羊の皮に書かれた世界で最も古い旧約聖書が秘蔵されているのだという。お椀のような形は、発見された時聖書が入っていた壷の形を模したものだという。先客が
出て来るまで、私達は絵葉書を売っている入口の待合室で待った。やがて私達の番になったので中に入ると、オレンジ色の光に照らされた中は、狭い通路の両側の壁に何のために作られたのか待避所のような穴が幾つもある。何も飾ってない。問題の聖書は一番奥の丸い部屋の真中に置かれた台の上に、丸型の厚いガラスのケースに入っていた。見学者は、そのケースの側を回りながら見られるようになっていた。縦、横三十センチくらいの皮に、黒インクで小さい字がビッシリと書かれてあった。端が相当傷んでいたが、本文は昨日書かれたものかと思うほど真新しい。この文書の発見についての経過は、歴史の本で読んだことがあり興味をもってよく見たが、どうも皮らしい感じがしない。博物館専属のガイドにコピー(模作)かと聞いたら、嫌な顔をしただけで返事をしなかった。
ここを出て本館まで歩く問、この高台から見える向こうの丘にへブライ大学、議事堂、高層ビルが夕陽に赤く染まって輝いていた。道路が整然と舗装され、交錯しているが、まだまだ空地が半分以上もある。その空地に全部ビルが立ち並ぶには、あと何年くらいかかるだろう。もう一度訪れることがあれば、すばらしい街並を見ることができるに違いない。
気温が大分下がってきて、肌寒くなった。本館には主に発掘された童、瓶、茶碗等を中心にした土器が並べられであった。中には婦人用の装身具もあって、グループの若い女性達は、二千年も前に作られた青銅や鉄製のごつい合ブローチや、腕輪を興味深げに見詰めていた。
奥の一室、が画廊になっており、時間もなかったので大急ぎで見たが、大きい作品はなく、ユダヤ人のシャガールやモジリアーニ等近代の作家のものが多く、どうもユダヤ人の作品だけを集めたものらしかった。
ホテルに帰るパスに乗った時は、もう街の灯がついていたがネオンは一本もなかった。

おススメ会社設立セット

  1. 店舗販売最安レベル9,800円!会社設立印鑑3点セット(柘植)

    ※通信販売は行っておりません。
  2. 会社設立センター・起業家応援パック

    会社設立・起業家応援パック(司法書士+税理士)まとめて頼む=とってもお得な起業家応援パッ...
  3. 会社設立ブランディングセット

    せっかく開業した貴方の法人、告知やご案内は、終了していますか??「会社設立ブラン...