トルコ入国

昭和五十六年三月十日、午後八時三十四分、列車はトルコ国境に近い小さな駅に止まった。車掌が来て、乗り換えだ。下りるようにと身振りで指示した。下車した乗客は、みんな荷物を持って線路づたいに進行方向へ歩いた。その後から私もついて行った。百メートルほど歩いたところにまた、小さな駅舎があった。この駅舎がもうトルコの駅だった。暗い線路を歩いているうちに国境を越えていたのである。
待合室は薄暗かった。真中に珍しいルンペンストーブが赤々と燃え、乗客の数人がそのまわりの椅子に腰をかけて暖をとっていた。立ったまま雑談をしている七、八名の男達はどうもこの土地の人らしい。正面の壁に六号大の金縁の額に入れた絵が三点掛けてあった。中の一点が風景画で、左右の二点が婦人像であった。絵も額縁も煤けていたが、撤密のタッチで描かれた良い絵だった。
寒いので待合室の隣のバーに入り、熱いコーヒーを飲み、卵を二個食べた。うまい。発車まで時聞があるので、ルンペンストーブを構図に入れ、暖をとっている人達のスケッチを始めた。みんな寄って来て、覗きはじめた。一人の男が似顔絵を描いてくれという。気楽に描いてやった。マアマアの出来だった。これを見ていた一人がコーヒーを一杯持って来て、次に描いてくれという。そうなると意識し、緊張して、もちろん未熟でもあるがなかなか描けないものだ。
九時半、イスタンプール行始発列車が入って来た。早速乗車する。十時一分発車した、これで明日の朝はイスタンプールに着く。そんなことを思って横になると、日本語を話す女の声、がする。返事をしている男も日本語だ。振り返って見ると新婚さんらしい。明日駅で会うだろう。
入国管理官が入って来てパスポートの検査をする。続いて税関の職員が来た。背広姿で帽子をかぶっていない。こんな税関職員は初めてだ。パスポートの提示を求め、「ジャボンか」と言ってトランクにちょっと触っただけでOKと言ってくれた。暖房が効いて暖かく気持ちがいい。

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