旧市街散見

三月十六日、九時にホテルを出る。学校の丁字路を右に曲って坂を下りて、二十メートルくらい行った右側の画材屋に寄ってみた。やっぱりジョン・ブリアン(肌色)がない。この色はなくともホワイトに黄に朱色を混ぜれば作れるのでそう心配することはないが、筆洗油がないのには困った。石油かガソリンでも洗えるが、引火性、が強いのでホテルの部屋で使うのは危険である。
画材屋の向い側にセルマニヤ寺院があった。寺院までの五十メートルくらいの両側は、さながら門前市で土産物屋が並んでいる。絵葉書を三枚買った。一枚十円だった。
境内を抜けるとバザールに出た。パザールはアーケード式で、碁盤目のように区画され、道幅も広く、五十メートルくらいの両側は全部貴金属店が並んでいた。店内は肱いばかりに明るく、ダイヤを飯め込んだ指輪、腕輪、ネックレス、時計が燦然と輝いていた。往き来している人達の服装も違う。女性は豪華な毛皮のオーバーを着、男はバリッとしたダブルの背広にピカピカの靴をはいている。これが駅前界隈のあの挨っぽい、ゴミゴミした汚い街と、歩いてわずか三十分たらずの同じイスタンプールかと疑われる。
貴金属店街の隣が高級毛皮店街で、毛皮の外套、皮ジャンパー、鞄、靴屋が続く。買う気はなかったが値札を見ると、安い、安い、日本のデパートの半額である。思わず恒子や娘に買って送ってやろうかと思ったくらいだ。
この毛皮店街の次が骨董店街であった。錆びた万剣、槍、馬具等をはじめ、民具、家具、道具屋が並び、小さい木箱に古い指輪や宝石類、勲章、記章が入れてある。棚に欲しいものが一つあった。十センチほどの高さの「裁きの女神像」で、銀製であった。まず値札を見て、日本円に換算して三万円というので考え込んだ。裁きの女神像は法律家が珍重するもので、普通公平を意味する目隠しをして、国家権力を象徴する剣を左手に持ち、罪と罰の軽重を量る秤を右手で高く掲げているが、この銀製の小さな像は、布で目隠しをし、右手に剣を持ち、左手に分厚い法典を持ち、秤を無造作に帯に差していた。その帯に差し込んだ仕草がなんとも自然で、見ているうちになんべんも買うか買うかと思ったが、これからの旅行の日程を考えてあきらめた。司法試験を目差している将の土産にやっぱり買えば良かったと、今でも大魚を逃した思いで悔やんでいる。
骨董屋の街を更に下がると、食料品や衣類、中には中古品を吊り下げた露店があり、更に野菜市場、植木市場が続き、小公園があって、ガラタ橋の挟に出る。岸辺にも二、三般漁船が繋がれた魚市場があった。野菜市場は初めて両替をした銀行の裏あたりである。
今日もガラタ橋の上でF3二枚、SM二枚を描いた。帰りにコッペパン一個、キュウリ三本、トマト四個、リンゴ二個で計七百十円。今日の買物はちょっと高かった。

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